『スーパーの野菜と無肥料野菜は何が違うの?』『肥料を使わない野菜って痩せてて生産性も悪いんでしょ?』『有機農法とは、また違うの?』
と疑問を持ってる方に向けて、私のやっている菜園ではどうして炭素循環農法(菌ちゃん農法)で野菜を作っているのかを他の農法と比較しながら理由を説明します。
私は、『子供に食べさせても安全安心な野菜』、を時間のない週末農業で野菜を作っているので、あまり時間がとれない人、安心安全な野菜を自分で作りたい人、これから家庭菜園をやる初心者の方にも参考になると思います。
目次
農法の紹介
詳しい内容は別のブログで説明しますが、農業は非常に広い分野なので、簡単に基本的な概要をお伝えします。
各農法にはそれぞれ独自の面白さがあります、もっと詳しく知りたい方は、当サイトで紹介している『おすすめの書籍』をぜひ読んでみてください。
- 慣行農法
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日本のスーパーなどで販売されている米・野菜・果物の多くは慣行農法で栽培されています。化学肥料や農薬を使用して作物を栽培する方法で、この農法は、害虫や雑草の管理を効率的に行い、収量を増やすために広く用いられています。特に1940年代から1960年代にかけてのグリーン革命以降、世界中で一般的な農業手法として普及しました。
- 有機農業
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有機JAS認証を取得したものを有機野菜と呼びますが
有機肥料を使った栽培方法のこととします。有機農法は、化学肥料や。基本的に農薬を使わずに、堆肥や自然由来の肥料を使用します。『有機農法』『有機栽培』『オーガニック農法』とも呼ばれます。
炭素循環農法-
炭素循環農法は、畑に沢山の有機物を入れ、植物と菌類(カビやキノコ)が一緒に助け合うことで成り立つ農法です。この方法では、土の中の炭素資材の動きを上手に利用して、作物を育てることができます。肥料や、農薬がいらないので、管理がとても簡単です。そのため、「たんじゅん農法」とも呼ばれています。
- 自然農法
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自然農法は、有機農業の一種で、昭和20年代に岡田茂吉と福岡正信がそれぞれ提唱しました。
岡田茂吉は、土壌に不純物を入れずに清潔に保つことで作物を育てる無農薬・無肥料の栽培を1935年から始めました。1950年に「自然農法」と改称し、その理念は現在も引き継がれています。
福岡正信は、1947年に「自然だけが無から有を生み出す」とし、耕さず、肥料や農薬を使わず、除草もしない農法を始めました。
自然農法とは少し似た、『自然農』(畝だけ作る)、『自然栽培』(耕す、必要に応じて除草する)などがありますが、法律で「自然農法」は定義されていないです。
肥料と農薬の使用
- ・慣行農法
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化学肥料や農薬を使って作物を栽培する
- ・有機農法
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化学肥料や基本的には農薬を使わずに、肥料は鶏糞、牛糞、米ぬかや油粕などの
有機肥料を使って栽培されます。ただし重大な損害が予測される場合に使用が認められる農薬が定められています。
- ・炭素循環農法
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自然の力を使った栄養の供給です。簡単に言うと『炭素資材→糸状菌→窒素固定菌→植物の栄養』というように栄養を供給します。炭素資材とは落ち葉、竹、もみ殻、木、などです。
慣行農法、有機農業をやられている方は「炭素率の高い資材を入れたら窒素飢餓になって野菜が育たない」、そう言われます。しかし炭素循環農法では、土の中の生き物を増やし、土壌の健康を保つために炭素資材を利用するので、この部分で考え方が違います。
- ・自然農法
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自然の力のみで作物を育てます。
環境への影響
農業の関係する環境問題はたくさんあると思いますが、特に問題だと感じているのが、過剰な肥料の施肥によって、地下水や野菜に『硝酸態窒素』が残留する環境問題が発生していることです。人間や動物が大量の『硝酸態窒素』を摂取すると、酸素欠乏症を引き起こす可能性があります。また、2級アミンと結合して発がん性物質のニトロソアミンが生成される恐れもあります。
牛の飼料に0.2%以上の硝酸態窒素が含まれると、食欲不振やふらつき、呼吸困難や突然死などの硝酸塩中毒を起こす可能性があります。高濃度の硝酸態窒素を含む飼料を継続的に食べると、流産や胎児の異常、乳量や成長への影響などの慢性中毒が発生する恐れもあります。
富山市ファミリーパークでグレビーシマウマが肺水腫で死亡したケースでは、血液中に90ppmの硝酸態窒素が検出されました。
汚染源は畜産堆肥、化学肥料、生活排水みたいです。
- 慣行農法 有機農業
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畜産堆肥、化学肥料 → 硝酸態窒素による環境問題
- 炭素循環農法 自然農法
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自然の力を使った栄養の供給 → 特になし
作物の健康と品質
私はお菓子屋に勤めているので品質や美味しさは特に気になるところですが、美味しさは人それぞれです。見た目ではっきりわかるものを紹介します。
どちらが炭素循環農法だとおもいますか?
正解は濃い緑色で大きな石が写っている方です。写真だと少しわかりずらいですが実際ははっきり違います、このように色が異なれば、味も違います。
炭素循環型農法の玉ねぎの葉は青くて元気ですが、大きさにムラがあります。通常の玉ねぎのサイズは慣行農法の7割程度です。3年ほど経過した畑ではムラがなくなると聞いているので、今後に期待しています。
ただし、この結果を見て、農家なら安定して同じ大きさのもの育てられる慣行農法で野菜を育てるのが当然だと思います。
栄養素
また違うブログで深堀しようと思うんですが、1960年頃の野菜の栄養価と、2010年頃の栄養価を比べてみると、現在の野菜は昔の野菜に比べたらビタミンやミネラルなどの栄養価がとても少なくなっています。
原因は、農法の違いというより、ハウス栽培が増えて、旬の物ばかりではなくなった、という話などもありますが、地力の違いでも栄養素に違いがあるようです。
地力とは、有機物などが入っていない、やせた土を『地力がない』、逆に、肥えた土で、森の土みたいな土を『地力がある』と言います。地力のある畑なら慣行農法の野菜でも栄養があるということですが、しかし地力低下の原因の1つに、化学肥料の過剰使用により土壌中の微量要素や有機物が不足し、微生物の活動が減少することがあるようです。
野菜の大きさ
炭素循環農法(菌ちゃん農法)で普通の大きさの果菜類が育つかどうか、始める前はとても疑問に感じていました。そこで、その様子を写真でお見せします。正直、慣行農法をやっていた時の肥料の使い方が上手じゃなかったせいか、炭素循環農法の方が収量も大きさもいい結果になりました。
- 慣行農法 有機農業
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一般的な大きさに育ちます。
- 炭素循環農法
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葉物野菜が特に大きく元気に育ちます。
- 自然農法
-
小さめ
労力とコスト
家庭菜園を対象に、労力とコストを比べます
- ・慣行農法 有機農法
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コスト・・石灰 肥料 マルチ 虫対策費 など
労力・・・野菜を植えるたびに畝や土づくり 連作障害の対策 野菜の管理
- ・炭素循環農法(菌ちゃん農法)
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コスト・・マルチ など
労力・・・初めの一回、高い畝を作り、炭素資材をたくさん乗せ、マルチをします。
シーズン終わりに足りないと思えば炭素資材を乗せる 野菜の管理
マメ科以外の連作障害は考えません。
大規模 機械化
今後、畑の拡大、機械化をして収入を得たいと考えているので、比較します。
- ・慣行農法 有機農業 炭素循環農法
-
可能
- ・自然農法
-
難しい
比較
比較表
項目 | 慣行農法 | 有機農業 | 炭素循環農法(菌ちゃん農法) | 自然農法 |
---|---|---|---|---|
肥料 | 化学肥料の使用 | 有機肥料 | 不使用 | 不使用 |
農薬 | 使用 | 一部に使用 | 不使用 | 不使用 |
品質 | 均一 | 均一 | バラツキがある | バラツキが多い |
環境(硝酸態窒素) | よくない | よくない | 良い | 良い |
コスト | 高い | 高い | 低い | 低い |
手間 | 多い | 多い | 少ない | 少ない |
大規模化 | 可能 | 可能 | 可能 | 難しい |
まとめ
今回のブログでは、『限られた時間の中で安心安全な野菜を作る』というテーマで比較してみました。
上の表を見るとわかるように、安心安全な面では、有機物や微生物を使う炭素循環農法が安心安全だと思います。有機野菜は農薬が安全なものを使用しているため、残留農薬の心配はないと思います。しかし、一部の野菜では、化学肥料や堆肥の影響で硝酸態窒素が残留する問題があることもあります。有機物の減少などで畑の地力が低下すると、栄養が減ってしまうこともあります。そのため、多少の大きさや収量のばらつきがあっても、炭素循環農法がいいと思います。
労力や時間の面でも、炭素循環農法がいいと思います。時間のない週末農業での作業が、野菜の世話に加えて、野菜を植えるたびに適切な肥料を撒いて、土を耕し、場合によってはマルチをかけ、追肥して、、など、やることが多いと大変で、できるだけ野菜の世話に時間を使いたいところです。炭素循環農法(菌ちゃん農法)では、畑に行けばいつも同じ畝がありますし、肥料もいらないので、一緒に植えてはいけない野菜などに気を付けるだけで楽しめます。
庭先などの家庭菜園では、炭素循環農法(菌ちゃん農法)をおすすめします。連作障害を気にせず、せまいスペースでも毎年同じ場所に、安心して野菜を育てられます。肥料も不要で、畝は年中そのままなので、マルチにスペース見つけたら旬の野菜の苗を植えれば、十分楽しめると思います。